福寿 皆さんこんにちは。福寿海無量でございます。本日は、6月30日に奥様を海洋葬なさいました中西様においでいただきインタビューをさせていただきます。中西さん、今日はお越しいただきありがとうございます。
中西 よろしくお願いします。

福寿 中西様は奥様を6月30日14時に沖縄県糸満南沖にて海洋葬を執り行われました。私どもとしては、最初の海洋葬の方でございます。本日はお忙しい中、糸満の事務所にお越しいただき、いくつかインタビューをさせていただきたいと思っております。まず、中西様からお話をいただいている中で、私どもが沖縄の地で散骨をするということでご紹介いただき、何度かお話をさせていただいております。奥様がご病気になられ、ご看病をなさる中、海洋葬散骨に至るまでの思い、奥様との思い出、沖縄の地にお越しになったことなどをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
中西 平成7年に沖縄に来ました。きっかけは大学の助手にならないかという話でした。その前は通勤時間2時間という都会の会社員をしていましたが、そろそろしんどいなと思っていたところで話が来て、迷いもなく沖縄に来ました。それから沖縄で29年過ごしました。本州に身寄りはいますが、しがらみなくのびのび過ごせました。幸い、嫁が家庭第一でやってくれていたので、子供たちも素直ないい子に育ったと思います。今回も家族が団結して、ちゃんと看取って送れたのかなと思います。
福寿 お子様のうち、何人が沖縄で生まれたのですか。
中西 下2人が沖縄生まれです。ただ、長男も2歳前に沖縄に来ているので、物心つく前です。

福寿 奥様と5人家族で那覇にお住まいだったということですね。差し支えなければ、奥様のご病気は何だったかお聞かせいただけますか。
中西 別の部位のがんが肺に転移して、最終的には肺がんでした。それが主な原因です。
福寿 お子さんたちもしっかりとご看病をなさったということでよろしいですか。
中西 そうですね。

福寿 大変なご看病をなさったということ、そしてそれを沖縄の地でご家族でなさったということ。家族の絆も強くなったのかなと思います。奥様の死が近づくにあたり、お子様たちとその後のお弔いについてご相談されたことはありますか。
中西 散骨、海洋葬は本人の希望でしたので、残った家族で話し合ったというより、それを前提に進めました。散骨に向かっていろいろ進めたという形になりました。
福寿 奥様がこの地に来てから、余命が近くなったことで、墓じまいやお墓の問題が多い中、ご本人が選択されたということでよろしいでしょうか。
中西 そうですね。まずは本人の希望です。闘病生活が4年弱ありましたので、その話をする時間は十分ありました。二人で話して、一番は子供を沖縄に縛り付けないようにということで、お墓のない形にしようと話していました。
福寿 従来のお墓について少しお聞きしたいと思います。ご実家は大阪ということですが、ご兄弟は何人いらっしゃいますか。
中西 私は弟がいて長男です。
福寿 長男としてお墓を継ぐこと、ご自身のライフワークとして早いうちに沖縄に来たことで、若いうちは家や家のお墓についてどのような意識をお持ちでしたか。
中西 実家の墓は今母親が入っていますが、次男が会社を継いだので、全部まとめてお任せという感じで、私は気楽にやらせてもらっています。ご先祖様のお墓については弟が継いでくれているので、特段問題はありません。
福寿 沖縄に長男さんが来ることで、そのあたりの路線は作られていたのかなと思いますが、ご自身は家についてどんなふうにお考えでしたか。
中西 私は根なし草のような人生で、大学から実家を離れて関東に就職し、沖縄に来て、普通ではない人生でしたので、正直何も考えていなかったです。
福寿 今回の海洋葬、散骨について、奥様のご病気があったから強くなったと思いますが、漠然とこの地で海と一緒になれたらいいなと思われたと思いますが、いつ頃から海洋葬でいいと思われていましたか。
中西 子供を縛り付けることはしないというのが一番です。沖縄は海が綺麗なので、海洋葬にすると沖縄にいても海で繋がっています。地元の身内も沖縄に来るのが大変なら、海に向かって手を合わせてくれたらいいかなと考えていました。
福寿 私ども海洋葬散骨をするにあたり、海に帰るという供養の形を大切にし、それを皆様にお披露目したいと思っております。今回、海に帰るというコンセプトをどんな意味づけで捉えていらっしゃいましたか。
中西 沖縄の綺麗な海に帰るというのは、沖縄に住んだ意味があると思います。お墓は作らないので、どういうメモリアルにするか考えました。今はグーグルマップなどで緯度経度を入れると、ここに葬られたという情報が残せます。その情報があれば、受け継いでいけると思います。うちの子供たちはまだ孫はいませんが、例えば話をした時に、沖縄にいなくてもデジタル情報で場所が特定できれば、ちゃんとメモリアルになると思います。新しい形で、私たちにとっては非常に良いと思っています。

福寿 今回、散骨の証明書をお渡ししましたが、位置情報を記載してお渡しすることで、中西様の思いが非常に意味のあることだと、場所が特定できることを私どもも重要視しております。
その後、弊社とお会いし、散骨を決意されたわけですが、その間に不安や迷いはありましたか。
中西 特にはありません。共通の知人からの紹介だったので、いろいろ調べてみてサービスはたくさんありますが、共通の知人でない人に頼むのは不安でしたので、今回すごく良かったと思っています。
福寿 ご家族の皆様も同じお気持ちでしょうか。
中西 そうですね。知り合いに紹介してもらったので、よかったという話になりました。
福寿 奥様がご存命で中西様が先に亡くなった場合も同じことになっていたと思いますか。
中西 病気になる前も、うちは散骨かなという話はしていました。墓の面倒を見るものを作らないということで動いていたので、私が先に亡くなっても散骨にしてねという話になると思います。
福寿 お子さんたちはこの後、散骨することで大変な思いをさせたくないという気持ちがあると思いますが、お子様たちもそれを汲み取っていらっしゃいますか。
中西 沖縄のお墓の大変さや、身寄りもないのにお墓を作る、墓じまいをする人が多いという話をしました。うちの子どもたちもずっと沖縄に住みたいと思っているわけでもないので、仏壇の面倒だけ見に来るために家を残しておくのは大変だろうと思います。子供らもだんだん分かってきて、なるほどねとなると思います。正直あまり深くは考えていないような気がします。
福寿 当日のことについてお聞かせください。当日の朝、いよいよ散骨ということで、どのようなお気持ちで朝を迎えられましたか。
中西 天気が良くて、いい散骨日和になりそうだなという感じでした。
福寿 船が出る時、ご家族とご友人もご一緒に散骨になりましたが、その時の動きやお気持ちはいかがでしたか。
中西 とても天気が良くて海も静かだったので、本当に良かったです。真っ青な空と海の状態で送れたのは良かったと思います。

福寿 奥様との最後のお別れが船の上、そして散骨ということでした。その時の思いはいかがでしたか。
中西 海に流した時、思った以上に骨のシルエットがずっと見えていて、あっという間に終わるのではなく、青い海に白い骨がだんだん沈んでいくのを見ながら、よかったなという感じがしました。非常に天気が良くて海の色が綺麗で、思った以上に綺麗な風景でした。本当に良かったと思いました。
福寿 ご散骨をなさって、船が戻ってきて、お子様、ご友人の皆様と見送り、その時のご自身のお気持ち、ご家族、お子さんたちがどのような思いを共有したと思いますか。
中西 一番はちゃんと海洋葬ができてよかったなというのが正直な感想です。子どもたちも同じような感じだと思います。
福寿 従来のお墓に納骨するものとは違うお別れの時でした。船の上での散骨、お見送りというものは、今後新しい葬儀、お弔いの形として良いものになることを願っていますが、その時のお気持ちはいかがでしたか。
中西 最後まで使命感のようなものがあり、海洋葬という形をしっかりすることが大事だと思いました。ちゃんと撮影もしていただき、データもいただけて、記録を残そうと思っていました。スマートフォンが海に沈んでしまうアクシデントもありましたが、皆さんがサポートしてくださり、映像という形でしっかり残っています。何も形が残らないのではなく、むしろしっかりした、ある意味お墓より普遍的な要素になったと思います。
福寿 儀式としての海洋葬散骨について、いかがでしたか。
中西 私たちにとっては非常に良い形だったと思います。一般的な葬儀もやっていませんし、身寄りも少なかったので、しがらみがなく自由にさせていただきました。非常に良い形だったと思います。ただ、ご家族の形はいろいろありますので、知り合いも最近身内を亡くした人がいますが、海洋葬や散骨はとんでもない、お墓を作らないなんてとんでもないという声もよく聞きます。そういう状況が許されていることには周りの方、他の身内を含めて感謝しています。

福寿 全骨の散骨でしたが、半分散骨する、少し散骨するということはいかがでしょうか。
中西 娘がアクセサリーの中に少し骨を入れて持っておきたいという希望があり、うちはそれをやりました。命日には家族で集まってネックレスをつけてもらい、散骨の場所が見えるホテルでランチをするという話もしています。一部を分けてもらって家の前に少しだけ置いています。全部なくなるよりは、かえっていいのかなと思っています。
福寿 散骨から1ヶ月経ちました。日々お仕事、生活をなさる中で、海や奥様に対する思い、心の変化はございましたか。
中西 実際、亡くなってから半年くらいです。いいことばかりでもなかったので、最後は意地になったりもしましたが、いい思い出だけ残って、悪いことは忘れるものだなと思います。
福寿 ご葬儀から海洋葬散骨までの流れとして、ご自身の中でどのくらいスムーズにいったか、気持ちに素直に正直にいったか、どのくらいの度合いかお聞かせください。
中西 私的には8割、9割はうまくいったと思います。本当は100パーくらいですかね。知らないところでこんなことになるのか、こんなことになっちゃうのかということは若干ありましたが、思い通りに支障なくスムーズにいったと思います。
福寿 海洋葬、散骨を実施して、ご親戚や友人、知人に話した時のご感想をお聞かせください。
中西 今はSNSがあるので、大学の共通の知り合いなどはみんな東京や中部圏にいることが多く、葬式をやっても来てもらえないこともあると思います。すぐに報告して言葉をもらったりしました。葬儀も家族葬にして、何人かは沖縄に来てくれましたが、来られなくてもビデオチャットで安置されているところの映像を見てもらい、手を合わせてもらったりしました。家族葬で行けなかったことをとんでもないとは言われませんでした。
福寿 中西さんはご夫婦で早いうちから沖縄に来ていましたが、中西さんなら海洋葬にすると思っていたという話はありましたか。
中西 まだ若いので、死んだらどうするという話はあまり出ていませんでしたが、そうなんだという反応でした。
福寿 これからお弔いの選択肢として海洋葬散骨をなさる方が増えると思いますが、決め手になることは何でしょうか。
中西 核家族化が進み、私の場合は27歳で最初の子供が生まれて3人というのは大学の同級生でも珍しいです。みんなだいたい遅い人は40代で初婚、子供は一人、子供がいなくて夫婦二人というのもあります。そこでお墓を作ったら、誰が次に面倒を見るのかという話になります。こういう形で増えていくのかなという気がして、ちょっと早めにやらせてもらった感じです。
福寿 奥様のご賛同、生前のご家族の賛同があり、このような形になりましたが、これから一人の方が多くなる中で、弊社が散骨証明書を出したり、後々のケアをしていくことがあります。何か足りないもの、今後した方がいいことがあればお聞かせください。

中西 散骨の場所のGPS情報がありますので、アーカイブを管理されると良いと思います。身寄りがないと思っていた人が遠い親戚が来てどうなっていますかというお問い合わせがあった時に、何月何日にこの地域で海洋葬を行いましたという情報を伝えるだけで良くなると思います。グーグルマップのようなものでグループを作り、ここがこの人ですとすぐに出てくるデータベースのような形で整備されると非常に喜ばれると思います。
既存のお墓ですと墓地番号があり、菩提寺に来るとどこのお墓ですかと聞かれることがあります。それをきちっとデータ化し、お伝えできればと思います。最近は便利なので、検索してデータが上がってきたら、問い合わせするまでもなく、御社のデータベースやアーカイブのコンテンツに飛んでいって、散骨した様子や写真があったり、ご遺族の方がお許しいただければ写真があると、何十年も経って身内だけでなく友達がどうなっているのか知りたい時に、ここに埋葬されたという情報が得られるのは非常に良いコンテンツになると思います。
福寿 海洋葬散骨が現代の社会や家族に新たな意味を持つことを伝えていきたいと思っていますが、今回散骨をなさった時にご自身を納得させる意味づけはありましたか。
中西 納得というのはお墓を作らないことに対してですが、正直お墓を作ったらまずいだろうと思っているので、普通の人とは違う考え方かもしれません。事情が許さなくて親族一同が絶対墓を作れと言われたら、そっちの方が後悔したと思います。
福寿 海に帰る、海との一体感、それが奥様を先にお弔いした中で一体感というか、常に海に入れば繋がっているというイメージがありますが、そのようなものを持って今後も海との付き合いができると思いますか。
中西 沖縄に長く住み、綺麗な海というのもそうですし、散骨証明書で緯度経度の情報をいただき、非常に重要視しています。スマートフォンで緯度経度を入力して、長男はピンを立てていると言っていました。そこを見るだけでも思い返すことができ、それがあればどこにいても散骨した位置を意識できるので、お墓に行くのと同等の思いが出てくると思います。お墓を否定するものではありませんが、我が家はそれが良かったと思います。
福寿 本日は一連の海洋葬の流れの中で、中西さんの思いを語っていただき、今後この海洋葬が人々の心に根付き、確固としたお弔いの形になるよう、私どももこれからもやらせていただきたいと思います。最初のお客様としてお迎えできたこと、ありがたく思っております。今後ともよろしくお願いいたします。
中西 本日はありがとうございました。お世話になりました。ありがとうございました。