福寿海無量|僧侶が行う海洋散骨|心安らぐご供養を

08-02 インタビュー:沖縄の海洋散骨と家族の新しい弔いの形

福寿 皆さん、こんにちは。福寿海無量の福井でございます。本日は、6月30日に奥様の海洋葬を執り行われた中西様にお越しいただき、インタビューをさせていただきます。中西様、本日はよろしくお願いいたします。お越しいただきありがとうございます。

中西 よろしくお願いします。

福寿 中西様は、6月30日14時に沖縄県糸満市の南沖にて海洋葬(散骨)を執り行われました。弊社としては最初のお客様でいらっしゃいます。本日はお忙しい中、糸満の事務所までお運びいただき、いくつかお話を伺えればと思います。奥様がご病気になられてから海洋葬に至るまでの思い、ご家族のこと、沖縄とのご縁などをお聞かせください。

中西 平成7年に沖縄に来ました。きっかけは大学の助手にならないかというお話です。その前は都会で会社員をしており、通勤に片道2時間かかっていました。ちょうどしんどいと感じていた頃に話があり、迷わず沖縄に来ました。それから29年、沖縄で過ごしています。本州に身内はいますが、しがらみなく伸び伸びと暮らせました。幸い、妻は家庭第一でやってくれて、子どもたちも素右に育ったと思います。今回も家族が団結して、きちんと看取って送れたのかなと思います。

福寿 お子様のうち、沖縄でお生まれになったのは何人ですか。

中西 下の2人が沖縄生まれです。長男も2歳前に来ているので、物心つく前から沖縄ですね。

福寿 奥様と5人で那覇にお住まいだったのですね。差し支えなければ、奥様のご病気についてお聞かせいただけますか。

中西 別の部位のがんが肺に転移し、最終的には肺がんが主因でした。

福寿 お子様方もしっかり看病に参加されたのですね。

中西 そうですね。

福寿 大変な看病をご家族で沖縄の地で続けられ、絆も一層強まったのではと思います。奥様の最期が近づく中で、その後の弔いについてご家族でご相談はされましたか。

中西 海洋葬(散骨)は本人の希望でしたので、それを前提に進めました。残された家族で話し合い、散骨に向けて準備を進めた形です。

福寿 墓じまい等の問題が取り沙汰される中で、奥様ご本人が選択された、という理解でよろしいでしょうか。

中西 はい。闘病が約4年あり、話し合う時間は十分にありました。2人で話して、何より子どもを沖縄に縛り付けないよう、お墓は作らない形にしようと決めました。

福寿 ご実家は大阪とのこと。ご兄弟は。

中西 弟がいて、私は長男です。

福寿 長男としてのお墓の承継について、若い頃はどのようにお考えでしたか。

中西 実家の墓には今、母が入っています。会社は次男(弟)が継いだので、ご先祖のお墓も弟に任せています。私は気楽にさせてもらっています。特段の問題はありません。

福寿 沖縄に移られて以降、ご自身の「家」については。

中西 大学から実家を離れ、関東で就職し、沖縄に来て…と、やや型破りでしたので、正直あまり考えていませんでした。

福寿 海洋葬については、いつ頃から「これで良い」と思われていましたか。

中西 一番は、子どもを縛らないこと。沖縄の海は綺麗で、海洋葬にすれば沖縄にいなくても海で繋がれます。地元の身内も、沖縄まで来るのが大変なら、海に向かって手を合わせてもらえれば良いと考えました。

福寿 私どもは「海に還る」という供養の形を大切にしています。今回、そのコンセプトをどのように捉えられましたか。

中西 沖縄に住んだ意味があると思いました。お墓は作らないので、どうメモリアルを残すか考えました。今は緯度経度を記録し、ここに葬られたという情報を残せます。子どもに孫ができても、デジタル情報で場所が特定できれば、ちゃんとしたメモリアルになります。新しい形として、とても良いと感じています。

福寿 弊社から散骨証明書(位置情報付き)をお渡ししました。場所が特定できることは、私どもも重視しています。弊社との出会いから実施まで、不安や迷いはありましたか。

中西 特にありません。共通の知人からの紹介でしたし、いろいろ調べるとサービスは多いものの、見ず知らずの業者に頼むのは不安でした。今回は本当に良かったです。

福寿 ご家族も同じお気持ちでしたか。

中西 はい。知り合いの紹介で安心できた、という話になりました。

福寿 もし逆に、中西様が先に旅立たれていても、同じ選択でしたか。

中西 病気前から「うちは散骨かな」と話していました。お墓を作らない方向でしたので、私が先でも散骨にしてね、となっていたと思います。

福寿 お子様方も「散骨で負担をかけたくない」という思いを理解されていますか。

中西 沖縄のお墓の大変さや墓じまいの話をしました。子どもたちも将来ずっと沖縄に住むとは限りません。仏壇のためだけに家を残すのは大変だろうと。だんだん理解して「なるほど」となっていると思います。

福寿 当日のことを伺います。朝はどのようなお気持ちでしたか。

中西 天気が良く、散骨日和だと感じました。

福寿 ご家族・ご友人もご同席でしたが、その時のご様子は。

中西 海も穏やかで、本当に良かったです。真っ青な空と海の中で送れました。

福寿 船上でのお別れ、散骨のお気持ちは。

中西 海に流した後、想像以上に骨の白いシルエットが見えていて、青い海にゆっくり沈んでいく様子を見ながら「良かったな」と。非常に美しい風景でした。

福寿 帰港後、ご家族・ご友人とどのような思いを共有されましたか。

中西 まずは、無事に海洋葬ができて良かった、という思いです。子どもたちも同じだと思います。

福寿 船上での見送りは、従来のお墓への納骨とは異なるお別れでした。今後の新しい弔いの形として、どのように感じられましたか。

中西 最後まで「しっかり形にする」という使命感のようなものがありました。撮影やデータも残していただき、記録にできました。スマートフォンが海に沈むアクシデントもありましたが、皆さんに支えていただき、映像はしっかり残っています。何も残らないどころか、ある意味でお墓より普遍的な要素になったと思います。

福寿 儀式としての海洋葬はいかがでしたか。

中西 私たちには非常に良い形でした。一般的な葬儀は行わず、身内も多くないので、しがらみなく自由にできたのが良かったです。ただ、家族の形は様々で、海洋葬や散骨には否定的な意見もあります。そうした状況を許してくれた周囲や身内には感謝しています。

福寿 今回は全量散骨でしたが、一部を手元に残すという選択については。

中西 娘がアクセサリーに少しだけ入れて持っておきたいと希望し、そうしました。命日にはそのネックレスをつけて、散骨場所を望むホテルで家族でランチをしようと話しています。自宅前にもごく少量だけ置いています。全部なくなるより、かえって良い面もあると感じています。

福寿 散骨から1か月。日々の生活の中で、海や奥様への思いに変化はありますか。

中西 亡くなってから半年ほど。大変な時期もありましたが、良い思い出が残り、辛いことは薄れていくものだと感じています。

福寿 葬儀から散骨まで、どのくらいスムーズに、思い通りに進められましたか。

中西 8~9割はうまくいったと思います。100%と言ってもいいくらい。想定外のことも少しはありましたが、概ね支障なく進みました。

福寿 海洋葬・散骨を伝えた際のご親戚・ご友人の反応は。

中西 SNSですぐに報告し、言葉をもらえました。葬儀は家族葬で、来られない人にはビデオ通話で安置の様子を見てもらい、手を合わせてもらいました。家族葬だからといって否定的な声はありませんでした。

福寿 「中西さんなら海洋葬だと思っていた」という声はありましたか。

中西 若い世代なので、生前にそこまで話題になることは少なかったですが、「そうなんだ」という受け止め方でした。

福寿 今後、海洋葬・散骨を選ぶ方が増えるとすれば、決め手は何でしょう。

中西 核家族化です。私の場合は27歳で第1子、その後3人というのは同級生でも珍しい。初婚が遅く子どもが一人、あるいは夫婦のみ、というケースも多い。そこでお墓を作ると「誰が次に面倒を見るのか」という問題が生じます。そうした背景から、海洋葬は増えていくのではと感じます。

福寿 弊社では散骨証明書やその後のケアも行っています。今後あった方が良い仕組みはありますか。

中西 散骨場所のGPS情報のアーカイブ管理があると良いと思います。遠縁の親族から問い合わせがあった際に、「何年何月何日にこの海域で海洋葬を行いました」とお伝えできる。地図上でグループを作り、該当の地点がすぐ分かるデータベースが喜ばれるはずです。既存の墓地に番号があるように、データ化して検索でき、散骨時の様子や写真(ご遺族の許諾の範囲で)にアクセスできれば、年月を経ても身内や友人が情報にたどり着ける。非常に価値のあるコンテンツになると思います。

福寿 海洋葬・散骨が現代の家族に新たな意味を持つことをお伝えしていきたいと考えています。今回、ご自身が納得する「意味づけ」は何でしたか。

中西 お墓を作らないことについての納得です。事情が許さず、親族から「絶対に墓を作れ」と言われていたら、そちらの方を後悔したと思います。

福寿 海に還る、海と一体であるという感覚については。

中西 沖縄の綺麗な海、そして散骨証明書の緯度経度を重視しています。スマートフォンに座標を入れて、長男はピンを立てています。そこを見るだけで思い返せる。どこにいても散骨の場所を意識でき、お墓参りに行くのと同じ思いが湧きます。お墓を否定する気持ちはありませんが、我が家にはこの形が合っていました。

福寿 本日は、海洋葬に至る思いをお聞かせいただき、ありがとうございました。最初のお客様としてお迎えでき、心より感謝申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。

中西 本日はありがとうございました。お世話になりました。

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